01
現在のご職業と仕事内容、働くうえで大切にしていることを教えてください。
桶谷式乳房管理法という乳房マッサージの民間資格を生かし、産前産後の母乳育児支援を中心とした助産院を2012年より開業しております。母乳育児をスムーズに軌道に乗せるための妊娠中からの保健指導や、退院後すぐから断乳までの授乳期間中のサポートをさせていただいております。母乳育児は子育ての出発点であり、お母さんだけでなくご主人やご両親、上のお子さんなども含めたご家族全体のお悩みに寄り添い、「産んでよかった」「また産みたい」と思っていただけるような関わりを心がけております。
子育てに前向きではなかった方が、授乳を通して育児を楽しめるようになり、お子さんとの関わり方も変化していく姿を見るたび、この仕事を選んで良かったと感じます。また、1人目・2人目・3人目と出産される度にご相談いただき、長期に渡ってご家族と関わる中で、それぞれのお子さんの成長を一緒に楽しみ、悩み事もより深く理解し共有できることも貴重な経験です。授乳期は母子共に人生に関わる大切な時期であり、継続的に関わることで多くの学びが得られ、その学びをすぐに活かして仕事につなげていくことができることも助産院ならではの魅力だと感じます。
03
京都府立医科大学で印象に残っていることや得たことは何ですか?
大学のゼミで「母乳育児成功のための10か条(WHO/UNICEF)」を調べたことが母乳育児に関心を持つきっかけでした。当時は「母乳は自然に出るもの」と考えていましたが、文献を通じてその難しさを知り、興味を持つようになりました。学生時代に自ら興味を持ったテーマを深く掘り下げる機会があったことが、現在の私の基盤となっています。
04
京都府立医科大学での経験は今、どのように活きていますか?
助産師免許を取得しながらも、就職後の1年間は一般病棟に配属され看護師として勤務しました。他の友人が産科で勤務している中、目標を見失いそうになることもありました。しかし、「母乳育児成功のための10か条」を調べる過程で知ったIBCLCという母乳育児支援団体の勉強会に参加することで、自分が助産師であることを忘れずに働くことができました。
また産科に異動後は、先輩の「助産師は何か一つ誰にも負けない得意分野を持つといいよ」という言葉が後押しとなり、乳房マッサージの資格取得を決意し、助産院開業へと繋がっています。
勤務時代は多忙でどうしても業務が中心になりがちですが、そんな中でも「これを極めたい」という何かを見つけてみると、見える世界が変わるかもしれません。そんな「何か」に学生の頃に出会えていたのはとても幸運だったと感じます。
勤務助産師と開業助産師の連携が薄い現状を改善し、退院後早期の育児支援をスムーズに行える仕組みを構築したいと考えています。現在、当院にご相談に来られる方の多くは経産婦の方や桶谷式のケアを受けたことのある方からのご紹介が中心であり、特に初産婦の方と早期に繋がることが難しい現状を課題として感じております。医療機関との連携を強化し、「困ったときには地域の助産師に相談しよう」と思っていただける存在になれるよう努めていきたいと考えています。
06
これから京都府立医科大学を目指す方へのメッセージをお願いします。
私は「助産師になりたい」という明確な目標を持って京都府立医科大学に入学しました。助産師の資格取得には周りより多くの努力が求められますが、その分、卒業後の活躍の場は広がります。助産師は、性教育から周産期・更年期と、女性とその家族の一生に関わる仕事をしています。助産師になりたいと思っておられる方はぜひ「どんな助産師になりたいか?」を思い描きながら色々な学びや出会いを楽しみにして欲しいと思います。